稚魚の世話

まだ一度も稚魚を成魚にしたことがないのに、これを書くのはおこがましいことは分かっているのですが、なにぶん現在入院中で時間があり、暇であるため、一応これまでの経験と本(特にJoyce Wilkerson著「Clownfishes)やインターネットで得た知識をまとめておきたいと思います。

クマノミ類の飼育の基本は種類によってそれ程変わるわけではありません。しかし、成長速度や変態期の期間など種類により、相当違いがあることもあります。他の種類の飼育についても一部言及していますが、以下の文章は基本的にカクレクマノミの飼育を念頭に置いています。

当日〜3日目(クリティカル・ピリオド)

孵化した稚魚は最初ヨークサックという栄養の入った袋をつけています。ヨークサックはオレンジっぽい色をしており、腹部についています。これが胃になるようです。稚魚は孵化直後から餌をとることを覚えるのに時間がかかるため、餌を食べなくても栄養不足にならないような仕組みになっているのです。このヨークサックは2〜3日でなくなってしまいます。したがって孵化してから2〜3日以内に餌を食べることを覚えなければいけないわけです。この期間を「Clownfishes」の中でWilkersonは「クリティカル・ピリオド(Critical Period)」と呼んでいます。最初の24時間でおよそ20%が、次の24時間で残りの80%が餌の食べ方をマスターするそうです。

私はだいたいクリティカル・ピリオドの間に半分ぐらいを死なせてしまいますが、熟練の方の場合、この期間に☆になるのは5%以下だそうです。私のやり方と熟練の方では設備も手間も異なるため、仕方がないところです。

<死因>

この時期に☆になる一番の原因は孵化時に掬った時のショック、移動ショックです。孵化直後の稚魚は本当にナイーブなので稚魚を掬うときには細心の注意が必要です。稚魚のすくい方を参照してください。

<照明>

それから照明。照明は上部から強すぎない光を当てることが必要です。強すぎると餌が見えなくなってしまいます。この時期の稚魚はまだ目がよく見えません。特にこの期間は横からの光があるとより見辛くなるので、横からの光が入らないようにプラケースにカバーをします。或いは最初から元気のない稚魚だった可能性もあります。また照明の点灯時にショック死することもあるようです。

私は稚魚を入れたプラケースを水槽に浮かべても、照明の点灯時間は全く変えず、蛍光灯をプラケースの上から16時間点灯しています。稚魚には関係ないと思いますが、この水槽ではこの他にメタハラを9時間点灯しています。変態期が終わる迄(孵化1〜2週間後)ぐらいまでは照明を24時間つけっぱなしにする方も多いようです。これは照明点灯時のショック死をなくし、成長を促進し、早く変態まで持っていくことに有効であるとの考えからだと思います。私がこれをやらないのは、本水槽の中で稚魚を飼っているため、照明を24時間点っ放しにすると他の魚の睡眠が妨げられることと24時間点けっ放しにすると餌の濃度や水質管理が難しくなると思ったからです。より手軽な方法を選んだとも言えます。

<餌>

孵化した当初の稚魚の大きさは種類にもよりますが、およそ3mm以下です。生餌の中で最も入手しやすいブラインシュリンプ幼生(ブライン幼生)でも、この時期のほとんどの稚魚にとって大きすぎます。そのため現在入手可能な餌の中ではミツボシクロワムシ(“ワムシ”)が最も入手しやすく適していると思います。

カクレクマノミのように孵化したての稚魚の大きさが比較的大きい種類の場合、最初からブライン幼生だけでも飼育可能なのですが、それでも自分の体ほどの大きさがあるブライン幼生を餌だと認識し、且つ食べられる程の大きな稚魚であるのは、カクレクマノミの場合でも一部です。そのため、ワムシで飼育した場合に比べると成魚になる確率は格段に落ちると思います。

乾燥餌は大きさ的には問題ないですが、稚魚はプランクトンを餌として捕食するように遺伝的にプログラムされており、最初から乾燥餌を食べることはないです。

この時期の稚魚は目がよく見えないのででワムシの濃度は濃くする必要があります。この頃の稚魚は5mm程度しか視力がないので、前方5mm以内に複数のワムシがいないと餌を食べられないためです。

孵化する時間は消灯時間後のため、餌が見えないのでワムシを孵化した翌朝に入れてもいいようなのですが、私は稚魚を掬った直後に入れています。理由は翌朝点灯時間が5時半ごろなので、点灯直後から稚魚が餌を捕食することができるようにするためです。

ワムシをあげる頻度は1日に2〜3回が望ましいと思います。稚魚を飼育している水がクロレラを含んでいない限り、ワムシはどんどんお腹をすかせていきます。12時間以上クロレラを食べていないワムシは栄養価値がないため、たとえ残っていても外に出してしまい、新しいクロレラを十分食べたワムシを入れていくことが必要です。

ワムシを食べると稚魚のお腹はヨークサックのオレンジっぽい色から銀色に変わります。私は「銀腹になる」と言っています。この銀腹になれば一安心です。

<水質>

私は本水槽にプラケースを浮かべて稚魚を飼っていることもあり、もともと稚魚飼育の水は本水槽の水です。孵化した稚魚を新たに作った海水で飼育するのは、水質変化のショックで☆になる可能性があるので避けたほうがいいと思います。

1日に2回、朝と晩にプラケースの底面に溜まったごみをスポイトで吸い取ります。スポイトで吸い取った汚水は300mlのカップに溜めていきます。1度に1カップか2カップ、プラケースの容量が2.5Lぐらいなので12割の水を換えていることになります。スポイトで取った分はプラケースにあけた横穴から自然に注入されるようにしていますが、それがうまくいかなかったときは、カップでゆっくり、水流が起きないように気をつけながら、プラケースに注ぎます。

ワムシなどの生餌しか上げていないこともあり、この時期に水質悪化で☆になる稚魚はほとんどないと思います。しかし、底面に溜まったごみに頭を突っ込んで窒息したり、将来の水質悪化の原因となるものを取り除くためにも、或いは今後の習慣にするためにもこの時期から1日数回、できれば3回ぐらいの掃除は必須だと思います。

4〜7日目(変態期への準備期間)

稚魚の色はこの頃から黒味が強くなってきます。次の変態期までの準備期間です。稚魚の成長度合いにより、この期間は変わります。成長が遅い稚魚の場合、2週間ぐらい経たないと変態が始まらない場合もあるようです。大きさは大体35mm弱です。

<餌>

この頃から目もだいぶよく見えてきますので、ワムシの濃度を下げても捕食できるようになります。Wilkersonはワムシの濃度についてクリティカル・ピリオドの間は1ミリリットル当り15匹、この期間は同6匹が適当と言っていますが、測るのが面倒なので私は適当にやっています。

餌はワムシだけでもいいですが、この頃(或いは5日目頃)からブライン幼生を上げ始めてもいいと思います。但し、これはカクレの場合であって、マロンやクマノミ本種はもっと遅く、7,8日目からにした方がいいようです。ブライン幼生の良いところは、変態期にに必要なエネルギーを蓄える上でワムシよりも良い餌であるというところです。しかし、一方でワムシよりも大きさが大きいことから、小さ目の稚魚の場合はそれらが喉につかえて、☆の原因となったりもします。私は小さ目の稚魚の☆には目をつぶり、大き目の稚魚が変態期を楽に越せることを優先し、この時期からブライン幼生をあげることにしています。ブライン幼生を上げるときに気をつけなければならないのは、孵化していないブラインの卵が混ざったものをあげてはならないということです。孵化していない卵を稚魚が食べた場合、大き目の稚魚でも☆になるようです。またブライン幼生はクマノミ達にとっておやつのようなとても美味しい餌のようで、食べ過ぎて☆になることもあるそうです。手間を掛ける時間がある方は、できるだけ量をコントロールするといいと思います。具体的には稚魚がお腹一杯になったら、残りのブラインは取り出してしまうことです。稚魚がワムシを食べると銀腹になると書きましたが、ブラインを食べるとお腹がオレンジになります。

ちなみにブライン幼生と呼ぶのは孵化後24時間以内のものです。

Wilkersonは又この頃から乾燥餌を与えることをオプションとして薦めています。この頃は乾燥餌をあげても食べることはまずないのですが、感想餌に慣れさせるためには早い時期から乾燥餌を水面に浮かべておくことが有効との考えからです。但し、水を汚す原因となるのでよりこまめな手入れが必要となります。彼女は餌が底に落ちてから30分たったら必ず取り出すそうです。いづれにしても新しい餌は稚魚がお腹をすかしている朝がいいでしょう。お腹をすかしていると何でも食べてみたくなるものですから。

また餌をワムシからブライン或いは乾燥餌に切り替える場合、従来あげていた餌を直ぐに止めるのではなく、数日間は両方あげることが必要です。

<照明>

私は「クリティカル・ピリオド」の時期と同様、全く普段と同じです。

<水質>

この頃から水質悪化で☆になることもあるかと思います。1日数回の底面掃除は必須です。乾燥餌を上げている方は水質悪化の速度が速いと思いますので、水換えの割合を増やすことが必要だと思います。

812日目(変態期)

変態期は今まで黒いメダカのようなものだった稚魚が、クマノミらしくなる時期です。変態期の準備期間同様、稚魚の成長度合いにより、この時期は変化します。早い稚魚は6日目頃から、遅い稚魚は20日目頃までの数日間で変態します。具体的にはカクレの場合、黒かった稚魚の頭にヘアバンドのような白い模様が出て、その後23日の内に2番目のラインも出てきます。また体色も成魚と同様オレンジになります。また今まで普通の魚のような泳ぎ方をしていた稚魚達は、変態期が始まる前日或いは2日前から尾ひれをカールさせ、成魚の泳ぎ方の基本のようなものが出てきます。

このように大きな変化が稚魚の体に起こるため、稚魚には大変なストレスがかかりますし、エネルギーも必要となります。そのため、クリティカルピリオド同様、☆になる稚魚は多いです。またこの変態期が最後の山ということも言えると思います。この変態期を越えれば、☆になる原因は激減します。

<餌>

この時期はまだ全ての稚魚がブライン幼生を食べられるわけではないので、12日目ぐらいまではワムシも入れておいた方がいいようです。この頃から本格的に乾燥餌に慣れさせることが、必要になってきます。私の場合はこの時期はワムシとブライン幼生をあげていることが多いです。もしこの時期にすでに乾燥餌での餌付けに成功している場合は、ワムシもブライン幼生も必要ありません。

<照明>

私は「クリティカル・ピリオド」の時期と同様、全く普段と同じです。

<水質>

1日数回の底面掃除は必須です。水質悪化で☆になることも多い時期です。一方で変態期は体力も弱っているため、水換えはストレスになります。どのような餌をあげているかによりますが、110%程度の水換えが望ましいようです。私は様子を見ながら思い切って3分の1、或いは半分ぐらい替えてしまうこともあります。決してお勧めするわけではありませんが。

13日目〜(変態期以降)

変態期が終わると今まで水面にいた稚魚達は底に移動します。稚魚はまだ成魚のような揺れるような泳ぎ方をマスターしていないため、疲れるようで、底で横になる稚魚もいますが、☆になったわけではないので心配はありません。またこの頃から稚魚達は押し蔵饅頭をするような感じでコーナーに一塊になっています。これは野生では見ることが出来ない、水槽でしか見れない現象だそうです。とても可愛いです。

<餌>

私の場合、この時期の一番の悩みは乾燥餌に慣れさせることです。シュアーSを指で砕いて粉末にしてあげているのですが、なかなか食べてくれません。あまり長く入れておくと水質悪化が怖いです。一度ブライン幼生を完全に抜いて、乾燥餌を朝一番で上げるのが効果的のようですが、ブライン幼生を全て取り出すのも難しく、私の場合正直なところ効果が上がっていません。

カクレの稚魚が全て変態を終えるのは孵化後20日目ぐらいでしょうか。もうここまで育てれば後は成魚を育てるのと同じです。ヤッター!というわけです。しかし、私がコペポーダで水質を悪化させて37日目で全滅させてしまったように、くれぐれも水質にはご注意を!

(20031120日記)


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